手元供養 (番外編)
手元供養とは
少しのご遺骨を保管するミニ骨壺
博國屋提供
手元供養とは、故人の物質的な最後の存在である遺骨の一部を手元に置き供養する方法です。手元に残った遺骨を故人のよすがとして、「亡くなった方をいつも身近に感じたい」、「いつも近くにいて見守って欲しい」といった方々の「故人を想う心」を癒す、新しい供養の方法といって良いでしょう。
亡くなった人の遺骨を供養するという概念は昔からありましたし、実際、ひっそりと手元に置いている人も多くありましたが、これが「手元供養」と呼ばれ、公然と行われるようになったのはこの15年ほどのことです。2004年にはて「NPO手元供養協会」が生まれ、認知度がぐっと上がりました。
供養には「心の拠り所」が必要ですが、お墓やお仏壇がその意味を失いつつある現代に新たな選択肢を与えたのが「手元供養」という考え方です。
樹木葬や散骨のあと、少し残しておいた遺骨を手元で供養する人、永代供養墓で合祀になる前に取り分けておく人、お骨をパウダー化してコンパクトにしたうえで自宅に保管する人、ペンダントやダイヤモンドにして常に持ち歩く人など様々です。
手元供養を希望する理由
手元供養の先駆けである手元供養協会のアンケートによると、「手元供養」を選んだ理由の上位3つは「故人の一部である遺骨は、 仏壇や位牌より身近に感じられる」「そばに置いてあげたかった」「持ち歩くことができて、 いつも一緒にいる感じがいい」となっているそうです。そのほかに挙げられる理由にはこのようなものがあります。- 仲良しの主人を亡くしてとても納骨が出来ない
- お墓はあるけど手元にも置いて伴侶、家族を偲びた。
- お墓が遠くて墓参りに行けずさみしい
- お墓は暗くてじめじめしているので明るいところに置いてあげたい
- 故人が散骨を希望していた。その気持ちは大切にしてあげたいが、全てを散骨するのには抵抗がある。
- 経済的な理由やポリシーとしてお墓を建立できない、したくない
- 無宗教な形を希望していて、宗教的な供養の仕方に抵抗がある
- 従来型のお墓が金銭的に負担になることを故人も希望していた
- 仏壇が無いが別の祈りの場を設けて故人を偲びたい
- 結婚した娘だが、実の両親を手元で供養したい
手元供養の色々
手元供養協会のダイヤグラム
様々なタイプの手元供養がありますが、大別すると、納骨容器型、ペンダント・リング型、加工型に分かれています。また、安置するのか、持ち運ぶのかによっても希望するそれぞれのタイプの特徴をご紹介します。
納骨容器型 | ペンダント ・リング型 | 加工型 | |
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説明 | 容器に遺骨の一部を収納する形 | ごく少量のお骨をペンダントやリングの内部に収納する | 遺骨を加工して、扱いやすい形にする |
例 |
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価格目安 | 1万~20万円 | 1万~5万円 | 10万~50万円 |
納骨容器型 | |
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説明 | 容器に遺骨の一部を収納する形 |
例 |
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価格目安 | 1万~20万円 |
ペンダント ・リング型 | |
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説明 | ごく少量のお骨をペンダントやリングの内部に収納する |
例 |
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価格目安 | 1万~5万円 |
加工型 | |
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説明 | 遺骨を加工して、扱いやすい形にする |
例 |
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価格目安 | 10万~50万円 |
手元供養の実際 ~その人らしい方法を考える~
手元供養は故人と遺された家族の絆を表す新しい形の供養の方法です。形式にとらわれず、心をオープンにして、どのような形がお気持ちや、ライフスタイルに会っているのか考えましょう。
自宅安置型
アンクオン提供
容器に入れたお骨や、お骨から加工したオブジェなどを自宅に安置する方法です。
- 小さな骨壺や、一見するとお骨が入っているとは思えないオブジェもあります。
- 陶芸をされる方は自分で器を作ったり、お気に入りの小物入れの中に布袋に入れたお骨を入れたりすることも出来ます。
- 一般的にはお骨の一部(やその加工品)と写真、またしばしばお線香とリンを一緒に用意される方が多いようです。
- これらを安置するためにご本尊の入っていない仏壇を購入する人もいますが、箪笥やキャビネットの上でも十分です。素敵な布をひいたり、小さな屏風を後ろに立てる人もいます。
- 故人由来の思い出の品を一緒に飾ったり、季節のお花を飾ったりするのも良い考えです。
納骨ペンダントタイプ
未来創想提供
ペンダントにお骨の一部を入れて持ち運ぶ方法です。カロートペンダント、アッシュペンダントとも呼ばれています。
- お骨はほんの少ししか入りません。米粒で2つくらいでしょうか。そこで、自宅安置型も持っている人も多いです。
- ペンダントにはふたやネジで開けて細かくしたお骨を納めます。
- 完全防水になっていないものも多いので気を付けましょう。そういった物の場合は、汗、お風呂が気になるところです。
- お骨をペンダントに入れた後に溶接して完全に密閉してくれるサービスもあります。安心ですが、お骨を(通常)郵送する必要があります。
- 紛失のリスクがあります。
加工型
レイセキ提供
遺骨を加工して別のものに生まれ変わらせます。
- お骨を陶土に混ぜて焼いてセラミックにしたもの(食器にボーンチャイナというのがありますが、これと同じです)、メノウのような質感に仕上げた石、合成ダイヤモンド、遺骨を溶けたガラスに直接埋め込んだオブジェなどがあります。
- 最終的に形が変わってしまう物が多いので(骨としてのかたちが無くなってしまうので)信頼できる業者さんにお願いするのが大切です。
- 取扱は容易ですが、アクセサリー型は紛失のリスクがあります。
最終的な行き場は考える必要がある
手元供養を「番外編」としてあるには理由があります。
多くのケースでお手元に置くお骨は一部で、おおかたのお骨は納骨したり、散骨したり、と他の方法を考える必要があります。また、まだ先のことかもしれませんが、ライフスタイルが変わり自宅で供養できなくなったり、供養していた本人も亡くなってしまったりすることもあるでしょう。 最終的には、手元のお骨はどこか行き場が必要です。ご主人を亡くした奥様などは、「私が死んだら一緒に散骨して」などという方もいらっしゃいますが、ご遺骨のその後についても、ご家族で話し合っておく必要があるでしょう。
関連情報
【トピックス:お役にたつ関連情報 】
お骨にこだわる:魂魄思想
日本に伝来した仏教は、中国・韓国を経て渡来する中で「儒教」や「道教」的思想が加味されていましたので、日本人の仏教観には儒教や道教的な思想が色濃く根付いているということができます。
魂魄思想では、人間は精神=魂と、肉体=魄、から成り、死後には魂は天に昇り、肉体は地に帰ると考えられています。大事な「魄=お骨」が入っているお墓は大切に祀られ、これに線香を焚き手を合わせることで「魂」を呼び寄せると考えられてきました。すなわち、肉体から遊離し拡散した気を集めて同期する「拠り所」が遺骨であり、墓であるのです。
この思想は純粋に仏教的な考え方ではありませんが、日本人の心にはとてもしっくりくるものです。その意味で手元供養は魄そのものに手を合わせるというところから、日本人の琴線に触れる手法と言えるのではないでしょうか。
ここにある手元供養は魄(遺骨)を身近に置くことで、魂との触れ合いを容易にしてくれるツールと考えてもよいでしょう。
お役立ちリンク(外部サイト)
- NPO手元供養協会:手元供養普及の先駆けとなった団体